しろくまはケモノ 03
同日00時32分
この日はA子が僕に命じられた作戦を実行し、それを録画する日だった。
A子の魅力に参ったシロクマが堪らず「自分から」襲い掛かる手はずである。勿論その後本当にするかどうかは彼女に委ねてあるが、決してA子は「する」とは言わなかった。
僕と正式な恋人同士であるわけではなく、僕に義理立てする意味も本来ない。しかし彼女は僕に操を立てている。僕が他にも付き合う女性がいる事を承知でだ。
僕はそのある意味純粋な愛に生きる彼女を好きだったし、また利用もしていた。彼女が僕を裏切る事は無いからだ。それは絶対の信頼と言ってもよかった。
「ハァ!ハァ!…来て店長さン?もう…たまらないの…はぁ!早く!ねぇ」
画面に映るA子は、誰が見てもシロクマを誘う表情で、彼女自らスカートを捲り上げ、カウンターに乗り、片足を大きく広げ下着をずらして陰部を見せている。
彼女の指は、そのまま円を描くように大陰唇を擦り上げ、皮をめくりクリトリスを剥き出し摘む。もうそこはすでに滴る愛液で濡れており、ひくひくと怪しく蠢き内部からシロクマを手招きしている。
A子の淫らなセリフだけではなく、彼女の肉体自身も、完全にオスを誘っているメスでしかなかった。
「A子はもう、駄目でした」
画面に映るA子の肢体に釘付けになっている僕の隣で、B子が説明を加える。
映像の中のA子は陰部を掻き毟り、愛液を撒き散らし時折びくんと足をつる。
「確かな事は解りませんが、彼…シロクマからは独特のフェロモンが、特にメスを性的に狂わせる因子が発されていると思われます」
A子に近付いたシロクマが人間の腕ほどもある巨大なペニスを取り出し、A子の下腹部に擦り付けるとA子はガクガクと振るえ、シロクマにしがみ付き「ヒィッ!ヒィッ!」と何やら叫んでいる。
「見ての通り殆ど非合法のドラッグに近い効果が表れています。あれだけ近くだと回避する事も出来ず呼吸する度に濃厚なフェロモンを取り込む事になります」
シロクマが腰を振り出す頃には、A子はカウンターの上で肢体を仰向けに投げ出し、人形の様に寝そべっていた。頭は完全にカウンターの向こうへ落ち、表情は見えない。
気絶しているのか全身の力が抜けきっているのが解る。それでも敏感な部分を擦るのか、シロクマの腰が奥に何度か進むと、A子の手足がピンと伸びた。
フェロモン……?
オスがメスを誘う為の、そしてメスがオスを誘う為の、つまりほとんど生物的な自然現象ではないか。
仮にあのシロクマが故意にそれを発現出来るとしても、性質が性質なだけに誰も奴を一方的に悪だ加害者だと断ずる事は出来ない。
出来たとしても知らなければ回避も出来ず、気付く前に自ら喰われている。
無敵。
余程影響力のある発言者でない限り、奴の暴力に近いフェロモンを説明し危惧すべき相手だと納得させる事は不可能だろう。
「アッ!…ぁはっ!アァーッッ!!」
A子が再び声を上げ始める。A子自慢の形の良い美しい胸はシロクマの腕で揉みくちゃにされ、叩きつける腰の波によってぐにゃぐにゃと変化する。
手足をシロクマの体に絡みつけ快感を堪えるように歯を食いしばり、A子は「もうダメっ!もうダメッッ!」しかし耐える事もままならない。
それでも時折カメラを意識して目線を向けるのが痛々しかった。
快楽に脳を塗り潰される圧倒的な暴力の中、彼女は何を思っていたのだろうか。
これは果たしてレイプではない。そうはならない。
何故なら本来被害者足るA子本人が、そうであると認識していないだろうからだ。
知らなければ、本当に”自分から抱かれた”ケースに過ぎないからだ。
もしかしたら加害者足るシロクマの奴もそれを解っていない可能性すらある。
例え解っていたとしても充分に白を切れる。
被害者側が被害者として加害者を告発する決意を以って対峙しない限り、暴かれるものではなかった。
「…っ?!」
突然、体重が倍になり座っていた椅子が大きく軋み悲鳴を上げる。
B子が後ろから僕を抱きしめ伸し掛かってきていた。
「所長ぉ……も…もう一度だけ…おっ…お願…うくッッ!」
B子がくすぐる様に耳元で囁き、絡みついたまま流れる様に回転する。僕の前に移動しそのまま僕の唇を吸う。
熱くぬめぬめした舌が口内を舐め上げ、唾液をすすり音を立てて飲み込む。
いつの間に脱いだのか既に脱いでいたのか黒いブラだけになった豊満な胸に僕の右手を導き、揉むように促す。
掌に感じる彼女の乳首はブラジャーの上からでも解るほど勃起していた。
「うン…所長ぉ…はぁ…お願いです…ぅ」
僕が何もしない事がもどかしいのか、僕の手ごと胸を強引に揉みしだき、下半身をぐりぐりと押し付けてくる。
動画を見ている途中から起立していたペニスがその刺激を受け、さらに硬度を増していく。
「あんっ…素敵です……」
僕が待てを言い出すよりも素早くペニスを咥えるB子。
ちゅばっ。ぶぽっ。ぱぶぉっじゅるちゅぴっ。じゅっじゅっじゅぷ。じゅぷじゅるぼっ。
大仰な音を立て、よだれを垂らしながら、彼女にしごかれるペニス。
B子のテクニックにかかると神経がそこだけに集中している錯覚すら生まれ、他のどの部分も動かせない。
尻を高く上げ、豊かな双乳を大げさに揺らし、視覚的な興奮要素もそつがない。
びゅくびゅくと一発目がB子ののどを潤すと、丹念に舐め上げられた僕の一物は、第二の発射が充分に可能な状態で彼女の口から解放される。
「お情けを……所長」
タイトなスーツスカートをまくり上げ、後ろを向き壁に手をつくB子。
見せ付けるようにぱっくりと指で開いたヴァギナから、にちゃにちゃと糸を引き白いよだれが滴り落ちている。
元々、仕事の報酬は「所長とのセックス」だと彼女は言っていた訳だから手順はどうであれ、断るつもりもない。
何より出さなければこちらは納まらないし、セックスで絶頂させなければ彼女も恐らく満足しないだろう。
ペニスを入り口に宛がう。
ゆっくりと割れ目に沿ってねぶる。ひくひくと小陰唇が戦慄き、尻が震え、汗が流れ落ちる。
「は…っ早く…何を…所長お願いですっ!…まんこして…」
さっきの様に自分から入れるのは彼女にとって厳密にはルール違反なのだろう。
僕が僕の意思によってB子に挿入する。それで初めて彼女の言うセックスなのだ。
キラキラと光る瞳いっぱいに大粒の涙を浮かべ懇願するB子の、普段とは真逆の愛らしさに心臓がドキリと反応し思わず抱きしめてしまう。
「ぁううぁぁああっっ!!!」
一気に侵入され子宮を打ち付けられ、B子の頭が跳ね上がり上半身が海老反る。
次の瞬間には前に折り曲げガクガクと絶頂の波を表現する。
ペニスは痛いほど締め上げられ、射精を、歯を食いしばり耐える。
「B子、イったね?じゃあこれで終わりだ」
優しく尻を撫で、ペニスを引き抜くふりをする。
「…?!ま、まだです!全くイってません!」
慌てて尻を押し付けてくる。
セックスが報酬ならこちらとしては楽だと僕が言った時、彼女はこう言った。
「私が絶頂して初めて完了ですわ。所長は何度ミイラになるかしら…大変楽しみです♪」
あくまで仕事上の関係であるB子とは、これまでもプライベートで身体を重ねた事は一度も無かった。
彼女をカフェで見つけ口説いた時、彼女には彼氏がいた。
ならばと「仕事だと思っていい」と押して彼女をほぼ強引に承諾させた。
あまり乗り気では無かった筈だ。
振られた男が元カノの身辺調査を頼もうと言うのだから。
それも、とても合法とは言い難い方法でだ。
彼氏持ちである彼女は囮には使えない。
そこで他の子との連携や僕直属のサポートを頼むと、彼女は驚くべき、秘書業の天才とも呼ぶべき手腕を見せたのである。
いつしか僕は部屋の鍵を渡すほどに彼女を信頼し、彼女もまた僕を支える事に喜びを感じ、心血を注いだ。
二人が親密な関係になるには、さほど時間は掛かっていないだろう。
予め報酬は「望むもの」と言ってあった。
他の子らは当然の様に諭吉を、しかしB子だけは違い、僕を要求した。
僕は一も無く彼氏の存在を危惧したが、彼女は事も無げにこう答えた。
「あの人とは、別れておりますが?」
続く⇒04