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攻殻機動隊SS 2つの誤算 03

内容:メスゴリラ少佐VSショタチンポです




視覚が戻る。すると次々に感覚器官が素子にフェードインしていく。
最期に戻った触覚が、左胸をゆっくり揉んでいるチャイの手を感じ取り、これは事故でも夢でも無く、リアルの事象だと確信させる。

「チャイ……?」

身を捩ろうとして、出来ない事にデジャヴを覚える。
まただ。
何故?

「ふふ……お姉さん。原液でドラッグ飲んじゃったから、効き過ぎて身体麻痺しちゃってるんだよ」

「ドラッグ?」

素子は首の端子の辺りに異物感を覚えた。
感覚は戻りつつあるが、反応と明確な認識までのタイムラグが恐ろしく長い。

「何を接続している……チャイ……」

心拍数が上昇し脳内物質が駆け巡る様に分泌、注入されている。軽く、致死量を――超えている?!
そんな馬鹿な。
制限や減少プログラムなどは掃いて捨てる程ある。
ドラッグそのものも、先ず、効く訳が無いのだ。

「お姉さん、凄い人だって解ったから、ちょっと特殊なドラッグを使ったんだ♪ チャンポンて言う奴だよ」

「! ……しーえいちえーえむぴーおーえむ…………なんてものを……」

素子は最期の力を振り絞り感覚器官を切った。

Cha-mPon。通称チャンポン。
アドレナリンを初めとする脳内物質の悉くを一緒くたにし、強引に圧縮して構成された麻薬の悪魔。
デカトンケイル級のAIも一瞬でオーバードーズしてしまう別格の威力で、殆どの場合において対AI用の武器としてしか使用しない、ドラッグとしては最悪の失敗作でもある。
人間に使用したと言う話は現在までには、一つも無い。

よく死ななかったものである。

素子が生き延びた可能性としては、世界屈指の最高級部品による義体。そこに最高のハッカーと最高の援護スタッフが重なり、奇跡を生んだ。
もしくは、ただ単に、チャンポンが測定量と違い致死量で無かった。或いは、類似した別のドラッグ。呼称が同じだけとも考えられる。

いずれにせよ急死に一生を得た事に違いは無い。

素子は、しかし、ここまでされてもチャイの事は、いたずら坊主程度にしか、まだ、現時点では思っていない。
その事について、素子は、さらにチャイの位置を『可愛らしい』から『愛すべき』にシフトしようと画策している自分の一角を不穏に感じ、その色を持つ思考を隔離・凍結させた。

時間は無い。
身体が強引に汚染され尽くされる前に、打開しなくてはならない。




01 02 続く⇒ 04 05
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